BTSの『Butter』がドイツでマイノリティになり人種差別に敏感になった私に深く刺さった話
ドイツで初めてマイノリティになった
日本にいると、自分が黄色人種であることを忘れてしまっています。
今までの私は、いまいち当事者意識が持てず、「人種差別なんてなくなってみんなが尊重し合えたらいいのにな」とぼんやりと思う程度でした。
しかし、私はドイツで初めてマイノリティになりました。
周りに日本人はほとんどいないため、何をするにも自分が黄色人種でアジア人で日本人なのだと実感させられます。
そんな私に、大好きなBTSの新曲『Butter』は深く刺さりました。
今回は、そんなBTSの『Butter』と人種差別について考察していきます。
BTSの『Butter』
世界中で話題の『Butter』
2021年5月21日にリリースされたBTSの新曲『Butter』。
公開当日に2億回近く再生され、YoutubeのMV史上最多再生回数を記録しました。
ドイツのH&Mでも流れていて嬉しくなりました。
最初にMVを観た瞬間から、楽しくてキャッチーでサマーソングにぴったりで最高!BTSが本気でグラミー賞を獲りに来た!と感じました。
私はしばらくずっと『Butter』を無限リピートしていました。
しかし、VliveでRMの口から「黄色人種」という言葉が出てきたのを聞いて、衝撃が走りました。
調べてみると、すでに素晴らしいARMY考察班が「Butter」が「黄色人種」を暗示しているという考察を載せています。
BTS自身は、『Butter』について「大それたメッセージはない」、「バターのようになめらかに溶け込んで君を虜にする」と言っていますが、これらの考察を読めば読むほど、私には「Butter」が「黄色人種」を暗示していると思えてならないのです。
今までの経緯を考えれば考えるほど、これが本当にBTSが伝えたかったことなのではないだろうかという気がしてきます。
あくまで個人的な考察です。
BTSの人種差別との闘い
BTSの人種差別との闘いを大きく5つにまとめてみました。
①初めてビルボード1位を成し遂げ、攻撃され始める(2018年以降)
非英語圏のアーティストが英語圏の音楽市場で、これほどまで有名になることは異例中の異例です。
だからこそ、攻撃の的にされ始めました。
②Black Lives Matterとの連帯を表明(2020年6月4日)
連日報道されているアメリカでのアジア系の人々へのヘイトクライムについて、BTSはBlack Lives Matterとの連帯を表明するメッセージを公式SNSに投稿しました。
また、黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官に首を押さえつけられて死亡した事件を受けて、世界各地で広がりを見せている抗議運動「Black Lives Matter」を支援するために、BTSと所属事務所のBig Hit Entertainmentが、約1億1000万円を寄付しました。
③ドイツラジオ局のDJが「BTSはウイルスだ」と発言(2021年2月26日)
ドイツのラジオ番組『bayern3』の司会者マティアス・マトゥスキクさんは、コールドプレイの楽曲をカバーしたBTSに対して、コールドプレイに対する「冒涜」であり、BTSは「ウイルス」だという人種差別発言をしました。
結局、人権意識の高いARMYからの批判が殺到して、番組は廃止となりました。
④グラミー賞にノミネート&単独パフォーマンス、受賞は逃す(2021年3月15日)
音楽界の最高栄誉とされる第63回グラミー賞授賞式で、BTSは「最優秀ポップデュオ・グループパフォーマンス部門」にノミネートされながらも、惜しくも受賞を逃しました。
授賞式では、ノミネート曲『Dynamite』の単独パフォーマンスを見事に披露しました。
しかし、その後米トレーディングカード大手「Topps」がBTSを侮辱するような風刺調のカードを販売したことで、世界中から人種差別だという非難が殺到し、Topps社は謝罪する事態となりました。
怒りの矛先は、Topps社だけでなく白人優位のグラミー賞を運営するレコーディングアカデミーにも及びました。
私も実際に授賞式を観ていましたが、放送中に何度も「BTS COMING UP NEXT」と繰り返し告知し4時間も引っ張っておいて、受賞はさせないという点に違和感を感じました。
⑤アジア系の人々へのヘイトクライムに対する声明を発表(2021年3月30日)
BTSはアジア系の人々へのヘイトクライムに対し、声明を発表しました。
この声明の中で、アジア人であることで偏見や差別を受けた経験についても語っています。
#StopAsianHate#StopAAPIHate pic.twitter.com/mOmttkOpOt
— 방탄소년단 (@BTS_twt) March 30, 2021
<BTSの英語声明全訳>
大切な人を亡くされた方々に、心から哀悼の意を表します。私たちは悲しみと怒りを感じています。
アジア人として差別を受けた時のことが思い出されます。理由もなく罵声を浴びせられたり、容姿を馬鹿にされたこともありました。なぜアジア人が英語で話すのかと聞かれたこともありました。
そうした理由で憎しみや暴力の対象になることの辛さは、言葉にできません。私たちの経験は、この数週間に起きた出来事に比べれば取るに足らないものです。しかし、これらの経験は、私たちに無力感を与え、自尊心を削ぐのに十分でした。
今起きていることは、私たちのアジア人としてのアイデンティティと切り離すことはできません。この問題を慎重に議論し、どのようにメッセージを伝えるべきかを深く考えました。
しかし、私たちが伝えるべきことは明確です。
人種差別に反対します。暴力を強く非難します。あなたも、私も、私たちも、尊重されるべき権利を持っています。私たちは共に立ち上がります。
まとめ
BTSは革命を起こす!?
社会問題について黙っているのは簡単です。
でもBTSはそうするのではなく、しっかりと様々な形で自分たちの意志を表明しています。
BTS自身は『Butter』に「大げさなメッセージはない」としていますが、個人的には前述の経緯から「Butter」が「黄色人種」を暗示していて、彼らなりの意思表示をしていると思っています。
この姿勢はドイツでマイノリティとなり人種差別に敏感になった私に勇気を与えてくれました。
そして、こんなBTSだからこそ応援したくなるのだと、再確認しました。
同じ想いを持ったARMYがきっとたくさんいると思います。
ポイントは「気が付かないうちに」
私が特に良いと思ったポイントは、「イエロー」や「黄色人種」、「人種差別反対」といった直接的な表現を使わずに、『Butter』で表現しているところです。
ヘイトクライムに対してあからさまな攻撃をすると、さらなる分断を生む可能性があります。
そうではなく、あくまでもポップな明るい楽曲としてみんなで楽しみながら口ずさみながら「バターのように溶け込む」ことで、「気が付かないうちに」差別のない世界を実現しようとしているのがさすがです。
そして、この『Butter』で白人優位と噂されているグラミー賞を受賞したら!と想像するとわくわくしてしまいます。
BTS、なんて素晴らしいグループなのでしょうか。
これからも『Butter』を聴いて応援したいと思います!
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